アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因は分かっていませんが、遺伝子が関わっており、喘息、花粉症、食物アレルギーとともに、しばしば家系内に遺伝します。
アトピー性皮膚炎では、痒みのある湿疹が悪化・改善を繰り返し、慢性の経過をたどります。
患者さんの多くは、アレルギーを起こしやすく、皮膚が乾燥して皮膚の防御機能(バリア機能)が低下しやすい、といった体質(アトピー体質)を持っています。
アトピー体質をもっている方がアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)との接触や皮膚への刺激を受けると、アトピー性皮膚炎を発症すると考えられています。アレルゲンは人によって様々ですが、View39という血液検査で簡単に一度に多くのアレルギーの原因物質を調べることができます。
乳児では、食物アレルギーによってアトピー性皮膚炎が誘発されることがあります。
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因は多数あることがわかっています。例えば精神的ストレス、気温や湿度の変化、特定の空気中の粒子(チリダニ、カビ、動物のフケなど)、皮膚細菌感染症、一部の化粧品、刺激を与える衣類との接触(特にウール製品)、金属アレルギーなどがあります。
アトピー性皮膚炎の症状
乳児期(2歳未満)
口の周り、頬、首、頭などにジクジクした湿疹がみられることが多く、胴体や手足にもあらわれてきます。1歳前後から乾燥した湿疹が多くなります。
幼児期・学童期(2~12歳)
首、腋の下、肘、膝の内側に湿疹が多くみられます。
思春期・成人期(13歳以上)
顔や首など上半身を中心に治りの悪い湿疹が続きます。
アトピー性皮膚炎の合併症
アレルギー性疾患
〇喘息
〇アレルギー性鼻炎
〇アレルギー性結膜炎
眼科疾患
〇白内障
〇網膜剥離
〇眼瞼皮膚炎
〇角結膜炎
皮膚感染症
〇伝染性膿痂疹(とびひ)
〇伝染性軟属腫(みずいぼ)
〇カポジ水痘様発疹症(ヘルペス)
眼科や耳鼻科、呼吸器の専門科の先生の診断治療が必要になることも多いです。
皮膚感染症については、塗り薬で悪化することがありますので、皮膚科専門医での早期治療と正しい塗り方の指導が必要になります。
アトピー性皮膚炎の治療法
アトピー体質を根治させる方法はありませんが、外用薬や内服薬でかゆみや症状を抑えることはできます。
治療の目標は、症状がない、または症状が軽く日常生活に支障がない状態を長期維持することです。
治療の柱となるもの
- スキンケア
- 薬物療法
- 悪化因子の除去
- 特殊加療(光線治療)
①スキンケア
アトピー性皮膚炎では、皮膚が乾燥し、皮膚のバリア機能が低下しているので、刺激に弱く炎症を起こしやすくなっています。バリア機能が低下しているとアレルゲンが侵入しやすい状態になっているため、皮膚のバリア機能を回復してあげることが大切です。
●保湿
- ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤、ワセリンなどを用います
- 入浴後のお手入れには、皮膚がまだ湿っている間に保湿剤を塗るのがよいでしょう
●清潔の保持と入浴
- 熱めのお湯は痒みを悪化させることがあるので注意しましょう
- 皮膚のバリア機能を保持するために、こすりすぎないようにしましょう
- 石鹸やボディーソープはよく泡立てて使い、しっかりすすぎましょう
- 低刺激の製品を選びましょう
●爪の手入れ
爪は伸ばさずに皮膚の傷を作らないように整えておきましょう
②薬物療法
●外用薬
ステロイド外用とタクロリムス軟膏が大きな外用治療の中心となります。
まずは、皮膚炎の症状・かゆみをおさえ➡次に、よい状態を維持する、というステップで治療が行われます。
外用方法には[リアクティブ療法]と[プロアクティブ療法]があります。
[リアクティブ療法]
時々湿疹がでる程度の軽症の場合、症状が出たときにステロイドで炎症をおさえるという方法です。
[プロアクティブ療法]
何度も繰り返して湿疹がでる場合、まず炎症をおさえ、ステロイドの外用回数や強さを少しずつ減らしていくという方法です。皮膚炎は外見上おさまっているようにみえても、皮膚の中では炎症が残っているので、ステロイドを中止してしまうと、湿疹が再燃しやすいと考えられているため、治っているようにみえても、ステロイドの外用をしばらく維持するという方法です。
どちらの方法が適しているかは、患者さんの状態により異なります。
実際の皮膚の内部の炎症の状況は、見た目の判断だけではなく、血液検査※(TARCという数値)で確認していくこともあります。
※血液検査(TARC)は保険診療です。
●保湿剤
スキンケアとして、外用約と併用していきます。
保湿剤は軟膏やクリーム、ローション、泡で出るタイプのものなど、剤形に種類がありますので、体に合ったものや季節によってあったものを使用していきます。使い心地が良いと感じることも長く継続するのに重要ですので、医師に相談してください。
●内服
痒みのコントロールのために、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服が処方されることがあります。1日1回~3回、眠気が出にくいお薬などもあります。ご自身の生活スタイルに合ったものを処方してもらいましょう。
また、症状がひどい場合に一時的に内服ステロイドを服用することもあります。その他の免疫抑制剤については頻回な血液検査や医師の判断が必要になります。
●注射薬(生物学的製剤)
最近では、アトピー性皮膚炎の原因にかかわる分子をターゲットにした治療薬である生物学的製剤が登場してきました。導入前に精密検査が必要になるため、限られた病院などの施設での処方になっています。(現在、当院では生物学的製剤の注射は対応しておりませんので、病院へのご紹介となります)
③悪化因子の除去
・アレルゲン
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、ダニアレルゲンに反応することが多いです。当院では、血液検査でのアレルゲン検査(View39、 Mast36)を行っております。
ダニアレルゲンに強く反応する場合、ダニ抗原除去は皮疹の改善に有効です。
・汗
汗は増悪因子です、夏場は特に注意しましょう。発汗後にはシャワーを浴びて皮膚を清潔に保ちましょう。
・花粉、シャンプーやリンス、刺激のある化学繊維
上記の刺激物を避けましょう。花粉の時期は外出後に洗顔したりしましょう。また、ご自身の髪型の工夫も重要です。アトピー性皮膚炎では、ご自身の髪が当たって痒みがでたりします。
・ストレス
ストレスが皮膚炎を悪化させることはよく知られています。睡眠をとって職場や家庭でのストレスを取り除くことが重要です。
④紫外線加療(ナローバンドUVB)
アトピー性皮膚炎に保険適応があります。
ナローバンドUVBという紫外線を過剰な免疫反応が生じている皮膚炎の部分に当てることで、痒みを抑え、皮膚炎の改善に効果のある治療です。
当院でも、アトピー性皮膚炎の特に掻き壊しのひどい部分などに照射を行い、早期に皮膚炎をもとの良い状態に戻すために紫外線療法を併用することもあります。